2023年5月15日月曜日

【論文(?)紹介】北風と太陽?

論文ではないのですが、自分の中で重要度の高い記事が公開されました。

長谷川功・二本柳健司・渡辺恵三・中村慎吾・佐橋玄記・飴谷尚人.2023.【会員通信】放流に替わる環境教育手段の模索~市民団体「山の手ヤマベ里親の会」と地元有識者らの取り組み~.魚類学雑誌,70: 140-143.

いわゆる「善意の放流」を行っていた市民団体が、自分も含めた地元有識者からのはたらきかけによって、環境教育手段を放流から観察会に切り替えた経緯をレポートしました。

だいたいこの手の話は、研究者側が無理矢理放流を止めさせようとしてけんか別れに終わることが多いように思います。そうではない例もあるのかもしれませんが、そのことがほとんど報告されないために、「けんか別れに終わることが多い」という主観を、自分は抱いてしまっているのだと思います。あるいは、研究者側の「上から目線」だったり、高圧的な振る舞いが原因であることも否めないのではないでしょうか?残念ながら、そう思わざるを得ないケースを自分は知っています。

そこで、本件に関わるにあたって、まずは相手の話を聞いて友好的な関係を築くことを心がけました。でもそれは、基本的には皆、魚好き、川好きでしたので、難しいことではありませんでしたよ。それでも環境教育手段の切り替えには時間がかかりましたが、お互いに築き上げた友好的な関係こそが 今回の成功の秘訣だったと思っています。著者一同は、市民団体側と有識者側の主要メンバーです。この貴重な成功例を魚類学雑誌に投稿してちゃんと形に残そうと提案したのは自分でしたが、全員が快く認めてくださいました。

童話「北風と太陽」を思い出しました。